AIを仕事に使ってみたけれど、思ったほど役に立たなかった。そう感じている方もいると思います。私も最初はそうでした。

私は製造業のメーカーで生産管理を担当しています。AIは以前から、チャットで質問して答えを返してもらう形で仕事に使ってきました。Excelのマクロを直してもらうのには助かりました。ただ、社内の情報は読ませられません。返ってくるのは一般的な答えで、業務の判断に使える場面はあまりありませんでした。

その感覚が、ここ数か月で変わりました。理由はAIの賢さよりも、AIに読ませる情報の側にあったと思っています。

AIが社内の情報を読めるようになった

きっかけは、社内の情報システム部門がNotionという情報共有のツールを導入したことです。このツールのAIは、社内に貯めた情報を探してから、それをもとに答えてくれます。RAGと呼ばれる仕組みです。

私は全社のAI推進担当ではなく、部署の中で使い方を広めている立場です。社内の情報を読ませる使い方を始めたのは、今年の6月頃からです。

社内の情報をもとに答えるのなら、答えの質は、どれだけ情報が貯まっているかで決まります。そこで、AIの使い方を考えるより先に、情報を貯める場所を整えることにしました。最初に手をつけたのが議事録です。

議事録は、どんな会議でも取るようにした

会議を記録して議事録にまとめるAIの機能を、どんな会議でも回すことにしました。

それまでは、毎回議事録を取っていたわけではありません。取るとしても、1本に30分から1時間はかかっていました。AIに任せると議事録は3分ほどででき、確認も5分ほどで済みます。私の場合、2時間ほどの会議が1日に2〜3本、多い日は4本あります。これまで記録に残らなかった会議の分まで、情報が貯まっていくようになりました。

最初は、みんながそれぞれ好きな形で議事録を作っていました。それでは内容の違うものが一か所に混ざって、あとで整理がつかなくなります。そこで議事録用のデータベースを作り、業務の性質ごとにプロジェクトのタグを付けて保管するようにしました。

効き目を一番感じているのは、私が参加しているプロジェクトです。会議が多く、検討する案件がいくつも同時に進むので、時間が経つと「あの件は検討した気がするけれど、どこまで進んでいたか分からない」ということがよく起きます。

そういうときにAIに聞くと、貯めた議事録から経緯を答えてくれます。議事録が、読み返すだけの記録から、聞けば答えてくれる知識に変わった。そういう実感がありました。

日報は、AIに下書きしてもらう

次に始めたのが日報です。以前は書いていませんでしたが、自分で書けば15分ほどはかかると思います。

今は、AIがOutlookのメールやTeamsのチャット、会議の議事録を参照して、日報の下書きを作ってくれます。作るのに3分ほど、確認を入れても5分ほどです。日報は部署で共有するデータベースに、みんなで貯めています。貯まった日報からは月報も作れるので、自分がやった仕事を振り返る材料にもなっています。

人の確認は外せない

AIが作るものが、いつも正しいわけではありません。議事録では、人の名前を間違えたり、要約がずれたりすることがあります。日報では、CCに入っていただけのメールを、自分が送ったかのように書いてしまうこともありました。

なので、確認は避けられないと思っています。それでも、おおむね合った内容で上げてくれるので、ゼロから作るのに比べてかなり手間が減ります。おかしな出力があればAIへの指示を直す。使いながら直していく前提で運用しています。

次は、マニュアルも貯めていきたい

いま試しているのが、マニュアルの半自動作成です。画面のスクリーンショットを撮りながら手順を声で説明していくと、AIがマニュアルの形にまとめてくれます。

仕事の手順やシステムが変われば、マニュアルは作り直しになります。作る手間が減っていれば、そのたびの負担は軽くなります。作るハードルが下がることで、これまで作られていなかったマニュアルも出てくるかもしれません。それが貯まれば、議事録や日報と同じように、AIが参照できる情報になります。

ここからは、中小企業診断士としての私の見方です

日常のちょっとした調べものなら、一般的な答えで十分だと思います。けれど会社の仕事は、一般には公開されていない、その会社だけの情報の上で動いています。業務に使う前提なら、AIの答えの質は、AIそのものより、その社内の情報をどれだけ読ませられるかでかなり決まる。チャットだけで使っていた頃と、社内の情報を読ませるようになってからを比べて、そう感じています。

情報が貯まるほど答えの精度が上がり、答えが役に立つから、また使って情報が貯まっていく。議事録、日報、マニュアルと貯まるものが増えるほど、この循環は回りやすくなると思います。反対に、社内の情報を読ませられないAIだけでは、この循環は始まりません。チャットだけでも以前より便利にはなりますが、どこかで「結局うちの会社のことは分かっていないよね」となってしまうと思います。

もし今、AIを入れるところからやり直すとしたら、私は最初から、自社の情報を貯めて参照させられる仕組みを選ぶと思います。何より大事だと思っているのは、社内の情報を貯め続けることです。何から貯めるかは会社によって違うと思いますが、あえて挙げるなら、議事録や日報のように毎日の仕事から自然に生まれるものは、資産に変えやすいと感じています。AIに作らせれば、人の手間もそれほど増えません。

何から貯め始めるか、どこまでをAIに任せて、どこを人が確認するか。そうした運用の形を一緒に考えるところから、お手伝いできればと思っています(AI・DXの支援メニューはこちら)。