「原価の見える化」と聞くと、製品ごとの原価計算や会計システムの話を思い浮かべる方が多いと思います。ですが私自身の原点は、もっと現場寄りの、装置の運転を毎月見直す仕事でした。石油化学プラントで、自分の担当する装置の効率を管理していた経験です。

「どれを製品にし、どれを燃料に回すか」を毎月見直していた

私は石油化学メーカーで、担当装置の運転効率を管理していました。見ていたのは会計上の原価そのものというより、原単位──投入した原料やエネルギーに対して、どれだけの製品が得られたか、という効率の指標です。

月次で、製品の収率や熱量あたりのコストを確認していました。たとえば、出てきたガスや液体のうち、どれを製品として取り、どれを燃料に回すか。運転温度を上げた方がいいのか、下げた方がいいのか。前の月の結果を振り返り、その反省を踏まえて翌月の運転条件を変える。そうして得た判断を、工場長に報告していました。

コストが見えないと、「無駄」に気づけない

この仕事で実感したのは、コストへの影響が見えないと、無駄な運転をしていても気づけない、ということです。

燃費の悪い運転、収率の落ちた運転をしていても、その「悪さ」が数字で見えなければ、現場は問題だと認識できません。気づけないものは、直しようがありません。結局、何が最適な運転条件なのかも分からないまま、なんとなくの運転が続いてしまいます。

見える化の本当の価値は「根拠で判断できる」こと

原単位を見えるようにして初めて、無駄な運転や、非効率で論理に合わない運転を避けられるようになりました。

ここが本質だと思っています。見える化の価値は、コストを下げること自体ではなく、感覚ではなく根拠に基づいて判断し、指示できるようになることです。「なんとなく温度を上げる」のではなく、「この条件の方が収率が良いから上げる」と言える。判断の理由を数字で説明できる状態になる。これは、現場を一段、成熟させてくれると感じています。

これは、中小製造業の原価管理にもそのまま通じる

ここからは、中小企業診断士としての私の見方です。

規模も業種も違いますが、この構造は中小製造業の原価管理にそのまま当てはまると考えています。原価が見えていないと、どの製品が儲かっていて、どの工程に無駄があるのかを、結局は勘で判断することになります。製品別の採算や、工程ごとのコストが見えて初めて、「どこを直せばいいか」を根拠を持って決められる。

私がプラントの現場で体感したのは、まさにこの「見えるようにして初めて、まともな判断ができる」という感覚でした。だから中小企業の支援でも、私はまず“見えるようにする”ことを大切にしたいと考えています。

まとめ

原価の見える化は、きれいな数字を作ること自体が目的ではありません。感覚に頼った経営から、根拠に基づく経営へ──その土台をつくる作業です。私が石油化学プラントの現場で、毎月の運転を見直しながら掴んだこの感覚を、中小製造業の現場でも活かしていきたいと思っています。